【選句体験記】

一読者として「好き」を基準に

 文・まのわ

 本来俳人の先生がたが選句される俳句大賞。一読者であるわたしでも予選通過した句を選句鑑賞できると、とても嬉しく取り組みました。読者賞ということで「好き」を基準に選びました。

 なぜかパッと目に飛び込んでくる句、頭にスッと入ってくる句があり、さっと通りすぎたのに後になって気になってくる句もあります。そうやって抜き出していった句をあらためて並べて読んで、一番好きな句、いいと思った句を選んでいきました。

 あるある、わかるーといった共感するもの、言われてみればそうだと感じるものや、常々思っていたけれど言葉にされていなかったと気づくもの。また、知らない言葉、違う感じ方、新しい視点との出会い。自分とは違う新しい世界を体験することができるものにはやはり驚きがあります。

 わたしが選んで鑑賞した句は次の三句。

 1619 ひと風呂を浴びて一人よ月見豆

 さっぱりとひと風呂浴びて、一人を楽しんでいる気楽さ自由さを感じる。自然とともに暮らしを楽しんでいる姿。月見豆は質素でささやかだが、とても豊かで贅沢な時間を味わっている。少しの寂しさはあるのかもしれない。でもきれいな月とともに在る自分を解放感とともに肯定している。

 0303 万華鏡回して春に組み替える

 万華鏡のキラキラ感や、パッと切り替わったことによる高揚感が伝わってくる。万華鏡を回して春にしているのだという楽しさがあっておもしろい。「組み替える」という下五はカチッという音とともに景色や世界が一瞬にして変わるマジックのようで気持ちいい。

 0924 夏空に好きと落書して逃げる

 「夏空に好きと落書して」、と大きく広げてきて、最後の「逃げる」にクスッと笑ってしまう。かわいいな初々しいな青春だなとニヤニヤして応援したくなる。ベタといえばベタ、王道といえば王道な、漫画のような展開にドキドキハラハラして見守りたい気分。

 俳句は短い言葉の中で想像力が掻き立てられ、世界や景色が広がっていくのがとても楽しいです。他の方の鑑賞を読むのはとても面白く、自分が選んでいなかった句の鑑賞を聞いて味わい方がわかり、ああ、いい! と気づくのが楽しいのです。世代の違いや経験の違いで知っている言葉にも違いがあります。新しい言葉は調べたり説明を聞いたりしてもどのような概念かよくわからないこともあるのですが、それもまた知るという喜びがあります。

 これから先生がたの選にどんな句が選ばれているか、どのように鑑賞されるか楽しみで仕方ありません。
 

【プロフィール】

 まのわ

 1961年生まれ。プレバトを見て俳句おもしろいなと思いなんとなく一人で始めた初心者。カルチャースクールの句会に一度参加し、2021年から句具句会に参加。今回の毎日俳句大賞への応募はしていません。