俳誌「円虹」

月刊誌。平成7年1月、神戸で山田弘子が創刊。師系・稲畑汀子。自然を讃えること、日本語を磨くこと、伝統性と現存性の調和。

〈主宰〉山田佳乃

■9月号の誌面から

逃したる魚を当てに沖膾(山田佳乃)

万緑や駆け抜けさうに志士群像(菊池共子)

萍の水面を漁る鳥の声(中村佳子)

六月の夜景の端の溶けゐたる(辻桂湖)

 

山田佳乃主宰の散文「海光抄」は「プロジェクト「俳句の会でセクハラをしないために」。今春発足したプロジェクト「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」の運動を受けた意見で、「「男だから」「女だから」という前提の作品も徐々に受け入れられなくなる可能性があるだろう。女と男の境界線は曖昧になっているのだ」「作品を通して知るプライベートな内容についても、作品で終わらせてしまったほうがいい。あれこれ詮索するのはマナー違反となる」「(「円虹」では)もちろん仲間同士の交流も大切だとは思うけれども、お互いにマナーを守り、よい距離感を保って俳句に専念できるように私も心を配っていきたい」と述べる。

椋誠一朗「椋砂東、父のこと」は、「ホトトギス」一筋の俳句人生を送った父・椋砂東を紹介するエッセイ。明治40年に島根県益田市に生まれた砂東は、昭和10年に作句を開始し、応召の際には高浜虚子選『支那事変句集』(昭和14年)に句を投じた経歴をもつ。上京した際には虚子の教えを受ける機会もあったといい、虚子没後に師の〈秋風や濱坂砂丘すこし行く〉の句碑を濱坂砂丘に建立するために奔走、句碑披きには高浜年尾・星野立子・京極杞陽らが参加した。山陰の地で伝統俳句を活性化させ、「ホトトギス」平成4年12月号では〈君に旅我に帰省や三瓶指す〉などで巻頭を得た。平成13年、93歳で長逝。