俳誌「小熊座」

月刊誌。昭和60年5月、佐藤鬼房が塩竈で創刊。師系・金子兜太・佐藤鬼房。人間風土の尊厳を思い、詩性の昂揚をめざす。

〈主宰〉高野ムツオ

■9月号の誌面から

雪しまきいつたん止みぬ鬼房忌(高野ムツオ)

霊木になるはずもなきわが夏木(渡辺誠一郎)

屋根裏の昏れて雨音巴里祭(津髙里永子)

涼しさや中也詩集に蔵書印(鶴巻日々来)

球場へ飛ばす自転車父の夏(鯉沼桂子)

うす雲のたなびく里の仏法僧(志摩陽子)

里山も彼方の山も夏盛ん(水戸勇喜)

殺さねばならぬ蜈蚣を殺し老ゆ(馬場小雫)

 

俳句時評は渡辺誠一郎「俳人の晩年、最期の俳句 子規・虚子(1)」。死を目前にして辞世の句を詠みたいと話す内藤鳴雪に対して高浜虚子が「特に辞世など詠むのは嫌いぢゃ」と返したエピソードなどを紹介する。

特集は佐藤みね句集『稲の香』(朔出版)。土見敬志郎が句集評「抒情の希求」にて、〈立春の波ひらひらと言葉生む〉〈翼みな畳み三月十一日〉などを挙げて著者の詩性を分析する。

後藤よしみの連載「高柳重信の軌跡」は「開戦前夜」。日中戦争が泥沼化する時期に青春を送った重信を、この時期の斎藤茂吉や田村隆一の姿を紹介して照射する。