俳誌「門」

月刊誌。昭和62年1月、鈴木鷹夫が塩東京で創刊。師系・石田波郷・能村登四郎。詩と俳の融合を志し不易を心に挑戦する。

〈主宰〉鳥居真里子

■9月号の誌面から

毒消しはいらんかね八月の卵(鳥居真里子)

噴水の空をくすぐる高さかな(野村東央留)

大丈夫葎は葎で生うてをり(青木ひろ子)

全景に六月の雨靴みがく(近藤萌)

夏安居や帯を剝ぎとる真面目な本(川北一征)

 

「門作家作品評」では宮本佳世乃(「炎環」「オルガン」「豆の木」)が執筆。〈くちびるのなかに雨ふる緋のダリア 鳥居真里子〉について「「雨」と「緋」しか漢字の表記がないことも含めて、顔や身体全体で泣いているようだ」と鑑賞。


島雅子の「現代俳句月評」は俳壇の諸作を取り上げる。〈花冷の葛切それもさくらいろ 上田日差子〉について、「葛切」は歳時記では夏だが、「今や暖房のきいた部屋で食べても美味しい」「京都の「鍵善」では通年提供している」と指摘し、「花冷」と「葛切」の響き合いを吟味する。

なお前主宰・鈴木節子氏が本年(2022年)5月8日に90歳で逝去しており、誌面には今なお氏を偲ぶ句や文章が並ぶ。