俳誌「澤」

月刊誌。平成12年4月、小澤實が東京で創刊。実作・研究をとおして俳句の本質を探究する。詩文学芸への目配りも忘れない。

〈主宰〉小澤 實

■9月号の誌面から

肉焼ける顔あかぐろし火取虫(小澤實)

あきくさと書けば即ち秋匂ふ(高橋睦郎)

今朝も又庭に小穴や魑魅居て夏(中田富子)

南風鯱は訛りを持つてをり(奥井健太)

 

根岸哲也「詩文芸書を読む」は川本直『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』。「一九二五年に生まれ、米文学界を颯爽と駆け抜けて一九七七年に亡くなった」という作家・ジュリアン・バトラーを支えた編集者の回想録の翻訳という体裁の偽書で、著者初の小説にして読売文学賞等を受賞した。「虚実綯交ぜのスリリングさ」と物語自体の展開を評価する。

小川正廣「富安風生訪問記」は昭和45年に富安風生の「若葉」に句を投じていた筆者の父が亡くなった際に風生から短冊を届けられ、後日筆者が風生宅に礼を述べにいった際の記憶を描くエッセイ。「俳句の方はどうですか」と問われ「考えていません」と述べた筆者は、定年退職後に俳句をはじめた。