俳誌「草樹」

隔月刊誌。平成17年12月、呼び掛け人・宇多喜代子、丸山景子、吉田成子によって創刊。会員制俳誌として創造性を重視する。

〈会員代表〉宇多喜代子

■101号の誌面から

こんなとき傍らに居て夕桜(大住孝子)

雨音に折々混じるひとの声(宇多喜代子)

この土地になじむ野良着や豆の花(中田節子)

誰の意とたづねてみたし雷雨来る(花房依子)

インパクトのある広告夏蓬(長井田鶴子)

 

渡辺和弘の新連載「瞬季 昭和俳句の一句」は〈颱風が日本列島の尾を摑む 日野草城〉を取り上げる。大景的な発想に「草城の本来の底力を思う」とし、死没の前年の句であることに触れて「病床生活十年に及ぶ最晩年ながら、表現力の冴えは衰えることなく、渾身の無の境地のようにも思えてくる」と結ぶ。

新井博子の新連載「楸邨覚え書」の第一回「『寒雷』」は加藤楸邨の第一句集を論じる。石川啄木に心酔して短歌を作っていた楸邨は、村上鬼城門の同僚の勧めで『鬼城句集』を読んで俳句に心が傾いていったといい、第一句集の代表句を引いて「ここには短歌の饒舌さはもうない」とする。