俳誌「鷹」

月刊誌。昭和39年、水原秋桜子門の藤田湘子が中心となって創刊、同43年に主宰制になる。同58年から三年間継続した主宰の〈一日十句〉や、二物衝撃の重視を掲げた平成8年の第二次「鷹」発足宣言は、俳壇に刺激を与えた。ロングセラーとなった『20週俳句入門』(昭和63年)の著書もある湘子の元からは飯島晴子をはじめとして多くの俳人が登場した。平成17年、湘子の逝去に伴って編集長の小川軽舟が主宰を継承、編集長は髙柳克弘に交代し、後継体制の若さが話題になった。

〈主宰〉小川軽舟

■9月号の誌面から
あぢさゐや頬杖解きし肘赤く(小川軽舟)

会議膠着サボテンの棘密々(奥坂まや)

小梅漬け大梅漬けし熟寝かな(布施伊夜子)

ライラック眼鏡の奥の眼に話す(細谷ふみを)

椅子引けば猫にあたりぬ春夕(岩永佐保)

野をわたる風はわかもの草雲雀(髙柳克弘)

蜜柑咲く太平洋の照り翳り(矢野弓子)

 

同人・兼城雄の「俳句時評」〈亡霊としての主体〉は鴇田智哉句集『エレメンツ』を取り上げ、鴇田の句が表現する幽霊のような主体に「俳句が現代性と接続する可能性」を見てとる論考。外山一機(「鬣TATEGAMI」同人)による巻頭エッセイ「下宿屋の人々」は、外山が学生時代に過ごした古めかしい下宿の住人たちの回想。黛まどか「歩行から生まれる思考」は第3回藤田湘子記念小田原俳句大会の講演録。国内外で遍路や巡礼を続けてきた体験から、思考・言葉と身体との関係性に話が及ぶ。なお同人・山本良明が6月26日に逝去。〈麦藁の香に﨟たけし髪膚かな 良明〉。