6月9日〜12日
・青蛙おのれもペンキぬりたてか(芥川龍之介)
・ちやぐちやぐ馬こ飾らぬ馬のかがやけり(戸塚時不知)
・郭公の声のあけくれ吾子育つ(木村蕪城)
・落し文ひらきて罪をひとつ負ふ(大橋敦子)
6月日5日〜8日
・今度こそ筒鳥を聞きとめし貌(飯島晴子)
・雨の階段あたらしくぶんぶんが死ぬ(今泉礼奈)
・比ぶるなかれ一八と犬の舌(島田牙城)
・するすると岩をするすると地を蜥蜴(山口誓子)
6月1日〜4日
翅わつててんたう虫の飛びいづる(高野素十)
トタン屋根の上で崩れるまで孔雀(田中亜美)
蜘蛛に生れ網をかけねばならぬかな(高浜虚子)
うまれた家はあとかたもないほうたる(種田山頭火)
5月29日〜31日
・五位鷺の声したたるや走梅雨(市村究一郎)
・月のいろして鮎に斑のひとところ (上村占魚)
・蟾蜍長子家去る由もなし(中村草田男)
5月25日〜28日
・目つむりていても吾を統ぶ五月の鷹 (寺山修司)
・胃の中に入りて虎魚のにらみゐる(宮坂静生)
・見失ふ雪加の声の残りをり(松田美子)
・蛇の衣草の雫に染まりけり(巌谷小波)
5月21日〜24日
・明易の鯨のこゑといふがやさし(中田 剛)
・河鹿鳴く中に瀬音はゆくばかり(皆吉爽雨)
・袋角夕陽を詰めてかへりゆく(澁谷 道)
・ががんぼが墜ちるテレビと壁の間(星野恒彦)
5月17日〜20日
・孵らざるものの声する青蘆原(大石悦子)
・青大将に生れ即刻殺たれたし(宮入 聖)
・後朝のおほきな毛虫みて帰る(榮 猿丸)
・草かげろふ夜をみづみづしくしたり(小島 健)
5月13日〜16日
・鸚鵡籠提げて水夫や初夏の街(安田北湖)
・雨しとど流されまいぞ目高の子(高木晴子)
・青嵐雀の喧嘩空へ地へ(神蛇 広)
・水揚げの鯖が走れり鯖の上(石田勝彦)
5月9日〜12日
・揚羽追ふこころ揚羽と行つたきり(髙柳克弘)
・愛鳥日たまごボーロをお茶うけに(本多遊子)
・逍遥遊虚々々々々々と夏鶯(小林貴子)
・天使魚の愛うらおもてそして裏(中原道夫)
5月5日〜8日
・雀らも海かけて飛べ吹流し(石田波郷)
・かはほりは火星を逐はれ来しけもの(三橋鷹女)
・翡翠の影こんこんと溯り(川端茅舎)
・人間も山椒魚も愉快なり(杉田菜穂)
5月1日〜4日
・鳩踏む地かたくすこやか聖五月(平畑静塔)
・小瑠璃飛ぶ選ばなかつた人生に(野口る理)
・はるかなる松蟬をきく静かさよ(五十嵐播水)
・盲導犬にこにこ歩くみどりの日(こしのゆみこ)
4月29日〜30日
・あたたかや仔犬の瞳葡萄色(甲斐由起子)
・烏賊に触るる指先や春行くこころ(中塚一碧楼)
4月25日〜28日
・公達に狐化けたり宵の春(与謝蕪村)
・毛を剪りし羊あの足の立上がり(依田明倫)
・つじかぜやつばめつばくろつばくらめ(日夏耿之介)
・雉鳴けりラテン語ゼミのたけなはに(柏原眠雨)
4月21日〜24日
・雀の子一尺とんでひとつとや(長谷川双魚)
・啜り泣く浅蜊のために灯を消せよ(磯貝碧蹄館)
・裏がへる亀思ふべし鳴けるなり(石川桂郎)
・蝶よ川の向こうの蝶は邪魔ですか(池田澄子)
4月17日〜20日
・留守番の文鳥に摘むはこべらを(髙田正子)
・面白や馬刀の居る穴居らぬ穴(正岡子規)
・まばたきの子象よ春はこそばいか(神野紗希)
・よこたへて金ほのめくや桜鯛(阿波野青畝)
4月13日〜16日
・真つ青な雨降り春蚕めざめけり(中尾公彦)
・寄居虫が抱へて測る次の貝(須川洋子)
・鶯のいちぶ始終のやさしさよ(後藤夜半)
・鳥の巣に鳥が入つてゆくところ(波多野爽波)
4月9日〜12日
・くすぐつたいぞ円空仏に子猫の手(加藤楸邨)
・九官鳥同士は無口うららけし(望月 周)
・けふ虻の強き翅音を味方とす(今野福子)
・とぶ鶉鼠の昔忘るるな(小林一茶)
4月5日〜8日
・水替へて清明の日の小鳥籠(星野麥丘人)
・蟲鳥のくるしき春を無為(高橋睦郎)
・乗込の鮒に堤の高かりき(鈴木厚子)
・川底に蝌蚪の大国ありにけり(村上鬼城)
4月1日〜4日
・恋語る魚もあるべし春の海(佐藤春夫)
・うれしさの狐手を出せ曇り花(原 石鼎)
・蠅生れ早や遁走の翅使ふ(秋元不死男)
・春の駒東風にあらがふごと歩む(皆川盤水)
3月29日〜31日
・春疾風屍は敢て出でゆくも(石田波郷)
・目の見えて仔猫は空を手に入れぬ(遠藤由樹子)
・まさをなる空よりしだれざくらかな(富安風生)