(鑑賞・俳句αあるふぁ編集部)
いきもの歳時記365日/3月29日〜31日
・眼力の弱きライオン花の雨(朝吹英和)
・うぐひすのケキョに力をつかふなり(辻 桃子)
・鳥帰るいづこの空もさびしからむに(安住 敦)
いきもの歳時記365日/3月25日〜28日
・花見弁当いろんな犬の見て通る(小川春休)
・はぐれたる羊のやうに雪残る(仁平 勝)
・につぽんは弓張るかたち鶴引けり(角谷昌子)
・鳥の恋空逞しくなりにけり(川村五子)
いきもの歳時記365日/3月21日〜24日
・蛤を膝に鳴かせて夜の汽車(石塚友二)
・今朝燕見たよとレジに入りながら(安倍真理子)
・囀のちゆんと応へてをりにけり(後藤夜半)
・猫は炉に鵯は椿に涅槃西風 (西島麦南)
いきもの歳時記365日/3月17日〜20日
・さくら貝と生れてうすももいろの視野(正木ゆう子)
・熔岩一片ほどの人生 百千鳥(伊丹三樹彦)
・春光や土竜のあげし土もまた(原 石鼎)
・竜天に登ると見えて沖暗し(伊藤松宇)
いきもの歳時記365日/3月13日〜16日
・渦巻くはさみし栄螺も星雲も(奥坂まや)
・揚雲雀空に音符を撒き散らす(石井いさお)
・富士山へ磯巾着のひらきけり(いさ桜子)
・花鳥に何うばはれてこのうつつ(上島鬼貫)
いきもの歳時記365日/3月9日〜12日
・永き日の象を見てゐるキリンかな(遠山陽子)
・朧夜を泪のごとく湧きしえび(宇佐美魚目)
・嘴に動く鰭あり春日に満ち(高野ムツオ)
・にはとりの血は虎杖に飛びしまま(中原道夫)
いきもの歳時記365日/3月5日〜8日
・汐まねきといううれしそうなるもの(阿部完市)
・啓蟄や生きとし生きるものに影(斎藤空華)
・仕事せにや飯食はせにやと地虫出づ(如月真菜)
・初蝶の草より高きもの知らず(岩岡中正)
いきもの歳時記365日/3月1日〜4日
・痩蛙まけるな一茶是に有(小林一茶)
・家鴨から春の拡がる水辺かな(大串 章)
・カナリアの羽の色あり雛あられ(遠藤由樹子)
・よく遊ぶおのれの影や柳鮠(阿波野青畝)
いきもの歳時記365日/2月29日
・春の鳶寄りわかれては高みつつ(飯田龍太)
いきもの歳時記365日/2月25日〜28日
・犬の舌赤く伸びたり水温む (高浜虚子)
・草千里下萌えにはや牛放つ (里川水章)
・畦道を野猫が駈けて春一番 (波戸岡旭)
・きさらぎや翼は雨を振り落とし(日隈恵里)
いきもの歳時記365日/2月21日〜24日
・春愁の尾あらば立てて歩みたし(下坂速穂)
・水中の河馬が燃えます牡丹雪(坪内稔典)
・初ひばり胸の奧処といふ言葉(細見綾子)
・右かれひ左ひらめの余寒かな(草間時彦)
いきもの歳時記365日/2月17日〜20日
・聞きとめしことまなざしに初音かな(片山由美子)
・きりもなく釣れて公魚あはれなり(根岸善雄)
・大楠に諸鳥こぞる雨水かな(木村蕪城)
・春の山らくだのごとくならびけり(室生犀星)
いきもの歳時記365日/2月13日〜16日
・春ぞ修羅巻貝の奥の奥おもひ(柳生正名)
・梅咲いて庭中に青鮫が来ている(金子兜太)
・黒山羊の崖のぼりくる春の潮(小島 健)
・喝采に海豹の芸ひとつのみ(金井文子)
いきもの歳時記365日/2月9日〜12日
・魚屋の魚寝ており春の昼(前田吐実男)
・薄氷の裏を舐めては金魚沈む(西東三鬼)
・恋猫の恋する猫で押し通す(永田耕衣)
・強さうな鳩がをりけり梅見茶屋(小野あらた)
いきもの歳時記365日/2月5日〜8日
・ててっぽうぽう山鳩は春つれてくる(酒井弘司)
・飯蛸のあはれやあれで果てるげな (小西来山)
・豹の斑の春うつくしき寒さかな(久保田万太郎)
・音楽はさよりの動きにてドアへ(原 ゆき)
いきもの歳時記365日/2月1日〜4日
・明ぼのやしら魚しろきこと一寸(松尾芭蕉)
・うら若き掌にのせてきし雪兎(山本洋子)
・けものらの耳さんかくに寒明けぬ(三橋鷹女)
・立春や徹頭徹尾黄のインコ(藤本智子)
いきもの歳時記365日/1月29日〜31日
・一月の全景として鷗二羽(塩野谷仁)
・凍蝶に指ふるるまでちかづきぬ(橋本多佳子)
・羽もなく鰭もなく春待つてをり(藤井あかり)
いきもの歳時記365日/1月25日〜28日
・馬の尻馬の尻ここは雪の国(細谷源二)
・文鳥に妻を娶らせ日脚伸ぶ(藤田直子)
・みちのくは底知れぬ国大熊生く(佐藤鬼房)
・氷下魚穴ひかりは闇をしたたらし(柚木紀子)
いきもの歳時記365日/1月21日〜24日
・方頭魚ほどの口かと聞かれをり(岡井省二)
・鶴凍てて花の如きを糞りにけり(波多野爽波)
・煮凝や鯛の目玉の真珠めく(齋藤朗笛)
・ふくろふに真紅の手毬つかれをり(加藤楸邨)
いきもの歳時記365日/1月17日〜20日
・倒・裂・破・崩・礫の街寒雀(友岡子郷)
・心臓の近く兎を眠らせる(大石雄鬼)
・蝶墜ちて大音響の結氷期(富澤赤黄男)
・求愛のくちばしを打つ雪の檻(十亀わら)