(鑑賞・俳句αあるふぁ編集部)
9月25日〜28日
・巣をあるく蜂のあしおと秋の昼(宇佐美魚目)
・天高し駝鳥はいつも脱走中 (小林貴子)
・みちのくの鮭は醜し吾もみちのく(山口青邨)
・秋の蜘蛛息吹きかけてすこし追ふ(森賀まり)
9月21日〜24日
・鵙鳴いて少年の日の空がある(菊池麻風)
・こほろぎに北の夜汽車の匂ひかな(今井 聖)
・落鮎や日に日に水のおそろしき(加賀千代女)
・放屁虫貯へもなく放ちけり(相島虚吼)
9月17日〜20日
・色鳥と生まれ何かを失ひぬ(市堀玉宗)
・虫の音や私も入れて私たち(野口る理)
・蚯蚓鳴く六波羅蜜寺しんのやみ(川端茅舎)
・野鼬は穂草かざしてをどるなり(五十崎古郷)
9月13日〜16日
・秋の蛇去れり一行詩のごとく(上田五千石)
・鷹柱ずんずん空の深みけり(岸原清行)
・釣られざま鱸真紅の口開く(磯 直道)
・雄鹿の前吾もあらあらしき息す(橋本多佳子)
9月9日〜12日
・秋空も摑んでいるか手長猿(あざ蓉子)
・あまりにも雀多くて案山子泣く(寺澤一雄)
・道玄坂さんま出る頃の夕空ぞ(久米三汀)
・いつせいに来て椋鳥の木となりぬ(山川幸子)
9月5日〜8日
・思ふことかがやいてきし小鳥かな(石田郷子)
・頂上や淋しき天と秋燕と(鈴木花蓑)
・鯖雲や犬の興味は他の犬(長嶋 有)
・草ごもる鳥の眼とあふ白露かな(鷲谷七菜子)
9月1日〜4日
・肩に来て人懐かしや赤蜻蛉(夏目漱石)
・象も蝶も一頭分の涼新た(なつはづき)
・ペリカンは秋晴れよりもうつくしい(富澤赤黄男)
・かりかりと蟷螂蜂の皃を食む(山口誓子)
8月29日〜31日
・鈴虫や月のうさぎの眠る頃(山田佳乃)
・秋の蚊と互いの運を嘆き合わん(越智友亮)
・風立つとこころ浅間へ草雲雀(大石香代子)
8月25日〜28日
・太刀魚は右向け右とならびおる(行川行人)
・嘘も厭さよならも厭ひぐらしも(坊城俊樹)
・白馬を少女瀆れて下りにけむ(西東三鬼)
・すいつちよん暢気がちやがちや早合点(奥坂まや)
8月21日〜24日
・石たたきそこは西郷どんの肩(近藤 實)
・邯鄲や紙を千年漉く国に(樫本由貴)
・曲り家に可愛がられて馬肥ゆる(大橋越央子)
・たましひのたとへば秋のほたるかな(飯田蛇笏)
8月17日〜20日
・電柱に手を触れてゆくいなご捕り (桂 信子)
・うつくしや鰯の肌の濃さ淡さ(小島政二郎)
・しづかなる力満ちゆき螇蚸飛ぶ(加藤楸邨)
・稲びかり猫の喧嘩に割つて入る(仲 寒蟬)
8月13日〜16日
・鶏たちにカンナは見えぬかもしれぬ(渡辺白泉)
・小さくて鉦叩には見えねども(西村麒麟)
・夏蚕の座ひろげ玉音聴きたる日(竹内弥太郎)
・お尻から腐つて来たる瓜の馬(茨木和生)
8月9日〜12日
・戦争にたかる無数の蠅しづか(三橋敏雄)
・長生きの象を洗ひぬ天の川(桑原三郎)
・山の日のゾウリムシつてきらつきら(小川楓子)
・鳴きそめしつくつくぼふしいづれ死ぬ(齋藤 玄)
8月5日〜8日
・握りつぶすならその蟬殻を下さい(大木あまり)
・原爆許すまじ蟹かつかつと瓦礫あゆむ(金子兜太)
・山繭の手荒きもののうすみどり
・秋立つとしきりに栗鼠のわたりけり
8月1日〜4日
・閑さや岩にしみ入蟬の声(松尾芭蕉)
・まくなぎに目鼻まかして牛の貌(清崎敏郎)
・飼猫の柄教へあふ夜の秋(津久井健之)
・犬の眼の狼光り木下闇(中嶋鬼谷)
7月29日〜13日
・柔かく女豹がふみて岩灼くる(富安風生)
・蝶の舌ゼンマイに似る暑さかな(芥川龍之介)
・野馬追の武者を尻目に放れ駒(行方克巳)
7月21日〜24日
・天牛の星空の髭長々と(斎藤夏風)
・道をしへ一筋道の迷ひなく(杉田久女)
・涼風の抜けみちはここ馬繫ぐ(茂木連葉子)
・夏深し釣られて空を飛ぶ魚 (澤 好摩)
7月25日〜28日
・まるまるとゆさゆさとゐて毛虫かな(ふけとしこ)
・手に軽く握りて鱚といふ魚 (波多野爽波)
・国引の力もて引け兜虫(大谷弘至)
・夏帽子駝鳥に求愛ポーズされ(松野苑子)
7月17日〜20日
・蚊にもよく喰はれ健康優良児(杉原祐之)
・梅雨明や牛にお早う樹にお早う(布施伊夜子)
・穀象やわれに貧しき戦後あり(岡部六弥太)
・日盛や動物園は死を見せず(髙柳克弘)
7月13日〜16日
・羚羊の水場と知らず岩魚釣(村上喜代子)
・羽蟻潰すかたち失ひても潰す(澤田和弥)
・魚はみな素顔で泳ぐチェホフ忌(武藤紀子)
・朝焼の波飛魚をはなちけり(山口草堂)