3月1日〜4日
・すみれそよぐ生後0日目の寝息(神野紗希)
・抱けば君のなかに菜の花灯りけり(河原枇杷男)
・結婚は夢の続きやひな祭り(夏目雅子)
・いじめると陽炎になる妹よ(仁平 勝)
2月25日〜28日
うらやまし思ひきる時猫の恋(越智越人)
大切な人の掌蝶生る(辻内京子)
はくれんのごとくつめたき肌とも(木村定生)
父母のしきりに恋ひし雉子の声(松尾芭蕉)
2月21日〜24日
襟あしの黒子あやふし朧月(竹久夢二)
猫柳ほどには君を慰めえず(藤井あかり)
春雷を殺し文句のやうに聴く(鈴木榮子)
子の息に母の息足す紙風船(薗田郁子)
2月17日〜20日
かの人を思ふよすがの玉椿(後藤比奈夫)
囀りや詩は垂直に愛を告げ(長嶺千晶)
春陰や独り身罪に似たるかに(佐野美智)
頰刺や父をひとりにして永し(冨田正吉)
2月13日〜16日
またしても妻の足音かと思ふ(日野草城)
バレンタインデー愛のかけらを貰ひけり(安居正浩)
魚は氷に上るや恋の扉開く(青柳 飛)
春眠の子のやはらかに指ひらき(深見けん二)
2月9日〜12日
花粉症恋もくしやみも勘違ひ(島田葉月)
ほろ苦き恋の味なり蕗の薹(杉田久女)
妻のほかの黒髪知らず夜の梅(能村登四郎)
おうと片手を挙げゆけり受験生(名取里美)
2月5日〜8日
遺影めく君の真顔や我を抱き(佐藤文香)
我したること吾子もする竜の玉(上野章子)
愛されてゐて薄氷を踏むあそび(辻 美奈子)
どこまでが帯どこからがおぼろの夜(津沢マサ子)
2月1日〜4日
春隣吾子の微笑の日日あたらし(篠原 梵)
獄凍てぬ妻きてわれに礼をなす(秋元不死男)
三つ子さへかりりかりりや年の豆(小林一茶)
日脚伸ぶ母を躓かせぬやうに(廣瀬直人)
1月29日〜31日
・雪はげし抱かれて息のつまりしこと(橋本多佳子)
・嫉妬無き夜も葱切つて涙して(八木三日女)
・わが胸にすむ人ひとり冬の梅(久保田万太郎
1月25日〜28日
・抱きとめし子に寒木の硬さあり(髙柳克弘)
・スキー帽一つを見失はぬやう(中田尚子)
・河豚を煮て生涯愚妻たらむかな(石田あき子)
・千鳥鳴く夜かな凍てし女の手(中塚一碧楼)
1月21日〜24日
・乳与う胸に星雲地に凍河(対馬康子)
・告げざる愛雪嶺はまた雪かさね(上田五千石)
・煖炉灼く夫よタンゴを踊らうか(三橋鷹女)
・寒中の汝に会へばそれでよし(古舘曹人)
1月17日〜20日
・母の死のととのつてゆく夜の雪(井上弘美)
・雪晴や父に抱かれて投函す(野見山ひふみ)
・狸汁吾子還暦となりしかな(栗林千津)
・後の世に逢はば二本の氷柱かな(大木あまり)
1月13日〜16日
・風花や髪に触れては指熱し(小島 健)
・寒昴幼き星をしたがへて(角川照子)
・誰も来よ今日小正月よく晴れし(星野立子)
・もう一度恋をしたいよ寒鴉(前田吐実男)
1月9日〜12日
・汝が胸を雪見舟ともおもひつつ(島田牙城)
・逢ひみてののちの雪搔く日々であり(太田うさぎ)
・一月の山の容を父とせり(斎藤梅子)
・湯豆腐や夫婦といふはをかしきもの(渡辺恭子)
1月5日〜8日
・七人の敵なつかしき初句会(松倉ゆずる)
・愛情は泉のごとし毛糸編む(山口波津女)
・七草や兄弟の子の起きそろひ(炭 太祇)
・水仙の日向に母と居る如く(星野 椿)
1月1日〜4日
・抱擁や初髪惜し気なくつぶす(品川鈴子)
・母方の鼻あつまりて御慶かな(矢野玲奈)
・爺ちやんにもらふ皺くちやお年玉(木田千女)
・初便り皆生きてゐてくれしかな(石塚友二)
12月29日〜31日
・冬帽子父のごとくに古りゆけり(菊池麻風)
・戀といふ字をつくづくと年の暮(石田勝彦)
・除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり(森 澄雄)
12月25日〜28日
・聖しこの夜人の世に人愛し(向田貴子)
・もうゐないけんくわ相手よ雪催(石 寒太)
・数へ日の中に逢瀬を得たりけり(加藤三七子)
・煤逃げの家にも世にも帰り来ず(文挾夫佐恵)
12月21日〜24日
・夫とゐて冬薔薇に唇つけし罪(鷹羽狩行)
・ゆず湯の柚子つついて恋を今している(越智友亮)
・問ひ詰めて人を泣かせし寒さかな(佐野美智)
・リボンかけ終へクリスマスプレゼント(今井千鶴子)
12月17日〜20日
・われの妻みるみるスキーヤーとなる(田中春生)
・ひそやかに女とありぬ年忘(松根東洋城)
・マフラーを巻いてやるすこし絞めてやる(柴田佐知子)
・その恋を断てと狐火あらはるる(仙田洋子)