9月29日〜30日
・薄紅葉恋人ならば烏帽子で来(三橋鷹女)
・妻がゐて夜長を言へりさう思ふ(森 澄雄)
9月25日〜28日
・泣けば子が何故に泣くかと秋の暮(野見山ひふみ)
・巨き手のひとを夫とす菊日和(山田径子)
・手の平の新米吾子の飢ゑ知らず(小川玉泉)
・我も汝も秋冷のもの汝を抱く(藤田哲史)
9月21日〜24日
・赤ん坊を洗ひあげたる良夜かな(山田露結)
・十六夜や音澄む妻の花鋏(岡田貞峰)
・長寿の母うんこのようにわれを産みぬ(金子兜太)
・野にて裂く封書一片曼珠沙華(鷲谷七菜子)
9月17日〜20日
・凭れ合う鶏頭にして愛し合う(曾根 毅)
・あきざくら咽喉に穴あく情死かな(宇多喜代子)
・父も又早世の人獺祭忌(稲畑廣太郎)
・秋風や殺すにたらぬ人ひとり(西島麦南)
9月13日〜16日
・颱風をよろこぶ子等と籠りゐる
・色鳥や病みては妻も擁かれず
・道あれば露草咲いて師の忌かな
・庭の菊男の子等は母が好き
9月9日〜12日
・こほろぎやおやすみなさい鷹夫仏
・秋の浜これきり逢はぬため歩む
・餓鬼のしりへにぬかづく恋か放屁虫
・投げキッスもろうたもろた秋祭
9月5日〜8日
・石榴吸ふいかに愛されても独り
・晴れた日は小鳥になつて会ひに来る
・蓑虫や僕は両親の子に生まれ
・流星や行方知れずの恋をして
9月1日〜4日
・母もまた母恋ふるうた赤とんぼ
・新涼の泣く力こそ赤ん坊
・人を恋ふこと唐突に秋の虹
・野菊摘み来世は父母に甘えたき
8月29日〜31日
・ピアノ一打一打この恋悔ゆべきか
・いまも少年カンナに母を待つわれは
・うら若き妻ほほづきをならしけり
8月25日〜28日
・つくつくぼふしつくつくぼふし愛の欲し
・桔梗一輪人を打つとき目を閉ぢよ
・きみんちのわけわかんない秋はじめ
・いもうとをむかし欲しがり赤のまま
8月21日〜24日
・夏休終りし頃は大人びし
・おとうとのやうな夫居る草雲雀
・今生の狂ひが足らず秋螢
・人肌のつめたくいとし秋の幮
8月17日〜20日
・目で交はすくちづけよけれ秋扇
・枝豆や実なき男捨てるべし
・雲に乗りし人の俤松虫草
・受けとめし汝と死期を異にする
8月13日〜16日
・迎火は母送火は父のため
・妻二タ夜あらず二タ夜の天の川
・父ははを連れて兄来る茄子の牛
・初恋や燈籠によする顔と顔
8月09日〜12日
・朝顔や百たび訪はば母死なむ
・怖がる子ばかりを鼠花火追ふ
・いなびかりひとと逢ひきし四肢てらす
・ままごとにかあさんがゐて草の花
8月05日〜08日
・泣きに行つていいかと言はれ瓜冷やす
・子を抱いて川に泳ぐや原爆忌
・空蟬を恋の言葉のごとく置く
・ゆめにみし人のおとろへ芙蓉咲く
8月01日〜04日
・おいて来し子ほどに遠き蟬のあり
・君はセカイの外へ帰省し無色の街
・雲の峰一人の家を一人発ち
・性愛や束にして紫蘇ざわざわす
7月29日〜31日
・妻の文句は死ぬまで聞けよ油蟬
・恋人となりたる頃の水着かな
・雑誌繰る君素足なり寝ころんで
・
7月25日〜28日
・雲海の一峰父として仰ぐ
・われを視るプールの縁に顎のせて
・横顔の平たき妻よメロン食ふ
・花合歓のいつわが胸に君眠る
7月21日〜24日
・吊忍恋知らざりしにはあらね
・炎天や別れてすぐに人恋ふる
・恋びとを呼ぶナイターのうねりのなか
・裸子をひとり得しのみ礼拝す
7月17日〜20日
・妹の名涼しく呼ぶや姉となる
・洗ひ髪夜空の如く美しや
・まくなぎのゆふぐれしろし愛されたし
・むかし吾を縛りし男の子凌霄花