12月13日〜16日
・雪の野のふたりの人のつひにあふ(山口青邨)
・十二月友にふとん屋こんにやく屋(内田美紗)
・熱燗の夫にも捨てし夢あらむ(西村和子)
・人抱けば人ひびきける霜夜かな(小澤 實)
12月9日〜12日
・妻より受く吾子は毛布の重さのみ(大串 章)
・牡蠣買うて愛なども告げられてゐる(阪西敦子)
・師走の夜つめたい寝床が一つあるきり(尾崎放哉)
・角巻の瞳のかがやくは恋ならむ(小林康治)
12月5日〜8日
・重ね着て母の編みたるものばかり(西嶋あさ子)
・冬濤に思ひやまざる恋といふか(稲垣きくの)
・なほ翔ぶは凍てぬため愛告げんため(折笠美秋)
・十二月八日よ母が寒がりぬ(榎本好宏)
12月1日〜4日
・先生ありがとうございました冬日ひとつ(池田澄子)
・冬ざれのくちびるを吸ふ別れかな(日野草城)
・父に湯たんぽ父に家捨てさせて(髙田正子)
・窓越しに君には見ゆる冬の雨(藤井あかり)
11月29日〜30日
・灯をともし潤子のやうな小さいランプ(富澤赤黄男)
・好きな人ふたりゐて冬あたたかし(浦川聡子)
11月25日〜28日
・ゆふべ背に立てたる爪で蜜柑剝く(山﨑十生)
・青年へ愛なき冬木日曇る(佐藤鬼房)
・ふたたび見ず柩の上の冬の蜂(山田みづえ)
・空港は別るるところ冬夕焼(谷中隆子)
11月21日〜24日
・海を見に父をつれだす返り花(野木桃花)
・追ひつきて革手袋の手に触るる(高浦銘子)
・埋火がほのとあり閨なまめきぬ(松瀬青々)
・みんな来よ今宵の炬燵あたたかし(五十嵐八重子)
11月17日〜20日
・愛かなしつめたき目玉舐めたれば(榮 猿丸)
・父を恋ふ心小春の日に似たる(高浜虚子)
・まつ白いセーターを着て逢ひにゆく(伊藤政美)
・家族とは焚火にかざす掌のごとく(小川軽舟)
11月13日〜16日
・カトレアを挿し花嫁の父となる(大石悦子)
・騒然と人恋うてゐる夜の落葉(金田咲子)
・花束の如抱き上げし七五三(千原叡子)
・みそさざい兄のかなしみには触れず(黒田杏子)
11月9日〜12日
・母の手をひいて雑踏日短か(坊城中子)
・こちら向く顔に水洟しづかさよ(森賀まり)
・鉛筆を尖らす愛に遠ければ(徳広 純)
・湯ざめして或夜の妻の美しく(鈴木花蓑)
11月5日〜8日
・画面の君へ消毒液負けの手を振る(佐藤文香)
・汝を帰す胸に木枯鳴りとよむ(藤沢周平)
・冬来れば母の手織りの紺深し(細見綾子)
・未婚一生洗ひし足袋が合掌す(寺田京子)
11月1日〜4日
・老が恋わすれんとすればしぐれかな(与謝蕪村)
・黄落や父を刺さずに二十歳過ぐ(中村安伸)
・母と娘の声がそつくり冬支度(今井つる女)
・人を愛し人に昂り秋の逝く(牧石剛明)
10月29日〜31日
・銀杏散る兄が駈ければ妹も(安住 敦)
・あはれ子の夜寒の床の引けば寄る(中村汀女)
・ハロウィンの魔女に悪魔に母若し(三森鉄治)
10月25日〜28日
・秋深き隣は何をする人ぞ(松尾芭蕉)
・髪に露結ぶまで野を逢ひに行く(野中亮介)
・なほ母をうしなひつづけ霧ぶすま(櫂未知子)
・友の子に友の匂ひや梨しやりり(野口る理)
10月21日〜24日
・父といふしづけさにゐて胡桃割る (上田五千石)
・四人兄弟みな五分刈りや吾亦紅(トオイダイスケ)
・人の手がしづかに肩へ秋日和(鷲谷七菜子)
・ふと子のことを百舌鳥が啼く(種田山頭火)
10月17日〜20日
・秋の暮母さんは叱るだらうか(関根 空)
・抱けば子の熱きはらわた十三夜(鎌田 俊)
・団栗のつぎつぎ生まる子の蒲団(檜山火山)
・大空や男女秋思を語り合はず(澤田和弥)
10月13日〜16日
・誰かれと逢ひたく歩く晩秋よ(清水径子)
・子供の手いつもあたたか紅葉狩(岡田日郎)
・恋ふたつ レモンはうまく切れません(松本恭子)
・椎の実が降るはればれと愛されよ(藤田湘子)
10月9日〜12日
・秋雲一片遺されし父何を為さん(福田蓼汀)
・天高し心に翼もちて子は(大竹多可志)
・万葉の秋の田の歌恋の歌(筑紫磐井)
・秋刀魚焼くいつしか君の妻となり(大高 翔)
10月5日〜8日
・子にみやげなき秋の夜の肩ぐるま(能村登四郎)
・木犀や恋のはじめの丁寧語 (南十二国)
・月光にいのち死にゆくひとと寝る(橋本多佳子)
・柿を見て柿の話を父と祖父 (塩見恵介)
10月1日〜4日
・林檎の木ゆさぶりやまず逢いたきとき(寺山修司)
・目のなかに芒原あり森賀まり(田中裕明)
・さびしがりやの師や栗の葉を指に捲き(熊谷愛子)
・月の美しさがわかる人とゐる(杉田菜穂)