いきもの歳時記365日/1月13日〜16日
・鳥のうちの鷹に生れし汝かな(橋本鶏二)
・風花のひとひらづつが鳥の褥(田中亜美)
・白鳥といふ一巨花を水に置く(中村草田男)
・生きものに眠るあはれや龍の玉(岡本 眸)
いきもの歳時記365日/1月9日〜12日
・晩成を待つ顔をして狸かな(有馬朗人)
・寒鴉己が影の上におりたちぬ(芝不器男)
・雪達磨星座のけもの聳えけり(南十二国)
・寒雷やてんじくねずみ藁に寝て(中西夕紀)
いきもの歳時記365日/1月5日〜8日
・軒の氷柱に息吹つかけて黒馬よ黒馬よ(臼田亜浪)
・ふるさとのここにもふくら雀かな(成井 侃)
・人日の日を分け合ひし烏骨鶏(天野きく江)
・木菟の耳をのぞいてゆきし子ら(森賀まり)
いきもの歳時記365日/1月1日〜4日
・友達になれさうな初雀なり(今瀬剛一)
・連れてゐる犬にも御慶申したる(奥名春江)
・ほの暗き忍び姿や嫁が君(河東碧梧桐)
・天井に貂棲むといふ秘仏かな(三嶋隆英)
いきもの歳時記365日/12月29日〜31日
・まぼろしの狼連れて年惜しむ(坊城俊樹)
・行く年や猫うづくまる膝の上(夏目漱石)
・白をもて一つ年とる浮鷗(森 澄雄)
いきもの歳時記365日/12月25日〜28日
・クリスマス馬小屋ありて馬が住む(西東三鬼)
・着膨れて鳥の鼓動となりにけり(藤井あかり)
・吊されし鮟鱇何か着せてやれ(鈴木鷹夫)
・鶴啼くやわが身のこゑと思ふまで(鍵和田秞子)
いきもの歳時記365日/12月21日〜24日
・女あり父は魚津の鰤の漁夫(高野素十)
・てんたうむしだましが死んで冬至かな(斎藤夏風)
・さみしさのいま声出さば鴨のこゑ(岡本 眸)
・セーターの胸にトナカイ行進す(金子 敦)
いきもの歳時記365日/12月17日〜20日
・鼠にもやがてなじまん冬籠(宝井其角)
・水底の日暮見て来し鳰の首(福永耕二)
・悠然と鯉の全長十二月(村木海獣子)
・毛布より猫と一緒に顔を出す(高倉和子)
いきもの歳時記365日/12月13日〜16日
・枯山に鳥突きあたる夢の後(藤田湘子)
・百合鷗よりあはうみの雫せり(対中いずみ)
・一羽去り二羽去り冬木残さるる(森田純一郎)
・猛り鵜を神と崇めて雪しぐれ(能村研三)
いきもの歳時記365日/12月9日〜12日
・冬眠の蛇身ときをり鱗立つ(正木ゆう子)
・冬空やキリンは青き草くはへ(森田 峠)
・諭しても甲斐なき態の海鼠かな(角谷昌子)
・にはとりの四、五羽のあそぶ神迎へ(神蔵 器)
いきもの歳時記365日/12月5日〜8日
・をしどりがたとへばおろかだとしても(櫂未知子)
・魴鮄の美し過ぎる赤さにて(児玉輝代)
・浮寝鳥狸寝入りもありぬべし(高橋悦男)
・昭和衰へ馬の音する夕かな(三橋敏雄)
いきもの歳時記365日/12月1日〜4日
・命あるものは沈みて冬の水(片山由美子)
・ずわい蟹包むローカル新聞紙(駒木根淳子)
・我病みて冬の蠅にも劣りけり(正岡子規)
・梟の鳴く帰らねば帰らねば(今井千鶴子)
11月29日〜30日
・凩や馬現れて海の上(松澤 昭)
・冬蜘蛛の呼吸その巣ヘ行き渡る(神野紗希)
11月25日〜28日
・むささびの夜がたりの父わが胸に(佐藤鬼房)
・冬ざれやものを言ひしは籠の鳥(高橋淡路女)
・豚の死を考へてゐる懐手(北大路翼)
・薔薇色の舌を狐も吾も蔵す(山根真矢)
11月21日〜24日
・青空へゆく冬蜂の後ろ脚(山西雅子
・金の糸身にちりばめて金線魚(名和隆志)
・国捨てし少年冬の河馬の前(山下知津子)
・勇魚くる土佐湾晴れてきたりけり(濱田順子)
11月17日〜20日
・羽ひらく孔雀のごとき湯ざめかな(青山茂根)
・山眠る獣は耳を尖らせて(津田このみ)
・海鳴はかの世のこゑぞ暖鳥(馬場龍吉)
・爛々と虎の眼に降る落葉(富澤赤黄男)
11月13日〜16日
・茶の花に兎の耳のさはるかな(加藤暁台)
・にんげんは面白いかと冬の猫(矢島渚男)
・初猟の犬や朝日に耳透きて(河野照子)
・ふぐ釣られ鞠のごとくに弾みけり(寺島ただし)
11月9日〜12日
・初しぐれ猿も小蓑をほしげ也(松尾芭蕉)
・足組めば小春の鳶に親しまる(長谷川秋子)
・木曾のなあ木曾の炭馬並び糞る(金子兜太)
・熊と熊抱き合へばよく眠れさう(遠藤由樹子)
11月5日〜8日
・返り花盲導犬は犬を見ず(津川絵理子)
・羚羊の総身風の突端に(井上弘美)
・浜千鳥用なき時も小走りに(棚山波朗)
・飯店の鸚鵡朗らか冬に入る(能城 檀)
11月1日〜4日
・啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々(水原秋桜子)
・綿虫が飛ぶのんのんと青い空(矢口 晃)
・黄落やはたりはたりと象の耳(小檜山霞)
・なにかゐるやう月の夜の草のなか(今井杏太郎)