10月29日〜31日
・犬とのみ行く場所のあり草紅葉(岡田由季)
・しんちぢり人魚の卵かもしれず(篠崎央子)
・雁や残るものみな美しき(石田波郷)
10月25日〜28日
・フラミンゴ夜は晩秋の色となる(津久井紀代)
・露の玉蟻たぢたぢとなりにけり(川端茅舎)
・魚らは風音知らず十三夜(渡部州麻子)
・谷風も木の葉山女も甲斐路かな(草間時彦)
10月21日〜24日
・猫の墓金魚の墓や秋深し(津久井健之)
・晴れわたる羊まるまる柚子まるまる(遠山陽子)
・鶫死して翅拡ぐるに任せたり(山口誓子)
・霜降の夕べ鯔とぶ出雲かな(脇村禎徳)
10月17日〜20日
・秋鯖の全身青く売られけり(嶋田麻紀)
・蹼の生えてめざめし月夜かな(眞鍋呉夫)
・瓜坊も来よ山の子の祭笛(永島靖子)
・驚きの手足のままに鵙の贄(西宮 舞)
10月13日〜16日
・犬放ちたちまち風の芒原(水原春郎)
・しあわせな木の実まざりし鳥の糞(渋川京子)
・滅びしは朱鷺のみならず島の秋(名和佑介)
・十頭のうち八頭の鹿が見る(阪西敦子)
10月9日〜12日
・体育の日を耳立てて兎たち(辻田克巳)
・寝ころべば若き日の空鬼やんま(成田千空)
・秋夕焼いるかの息は水の匂い(髙勢祥子)
・花鶏来とさわさわと鳴る樫の木よ(木倉フミヱ)
10月5日〜8日
・ななふしのやうにどこかにゐてくれる(小池康生)
・痩馬のあはれ機嫌や秋高し(村上鬼城)
・摘みくれし秋草蟻をこぼしけり(石田郷子)
・みのむしや人として世をものもらひ(常世田長翠)
10月1日〜4日
・鶴の来るために大空あけて待つ(後藤比奈夫)
・瀬田降りて志賀の夕日や江鮭(与謝蕪村)
・草の実の飛んで鰊が蕎麦の上(山口昭男)
・稲雀上機嫌なる日和かな(黒川悦子)
9月29日〜30日
・まんばうは尾びれを忘れ秋うらら(佐々木建成)
・鳥わたるこきこきこきと缶切れば(秋元不死男)
9月25日〜28日
・巣をあるく蜂のあしおと秋の昼(宇佐美魚目)
・天高し駝鳥はいつも脱走中 (小林貴子)
・みちのくの鮭は醜し吾もみちのく(山口青邨)
・秋の蜘蛛息吹きかけてすこし追ふ(森賀まり)
9月21日〜24日
・鵙鳴いて少年の日の空がある(菊池麻風)
・こほろぎに北の夜汽車の匂ひかな(今井 聖)
・落鮎や日に日に水のおそろしき(加賀千代女)
・放屁虫貯へもなく放ちけり(相島虚吼)
9月17日〜20日
・色鳥と生まれ何かを失ひぬ(市堀玉宗)
・虫の音や私も入れて私たち(野口る理)
・蚯蚓鳴く六波羅蜜寺しんのやみ(川端茅舎)
・野鼬は穂草かざしてをどるなり(五十崎古郷)
9月13日〜16日
・秋の蛇去れり一行詩のごとく(上田五千石)
・鷹柱ずんずん空の深みけり(岸原清行)
・釣られざま鱸真紅の口開く(磯 直道)
・雄鹿の前吾もあらあらしき息す(橋本多佳子)
9月9日〜12日
・秋空も摑んでいるか手長猿(あざ蓉子)
・あまりにも雀多くて案山子泣く(寺澤一雄)
・道玄坂さんま出る頃の夕空ぞ(久米三汀)
・いつせいに来て椋鳥の木となりぬ(山川幸子)
9月5日〜8日
・思ふことかがやいてきし小鳥かな(石田郷子)
・頂上や淋しき天と秋燕と(鈴木花蓑)
・鯖雲や犬の興味は他の犬(長嶋 有)
・草ごもる鳥の眼とあふ白露かな(鷲谷七菜子)
9月1日〜4日
・肩に来て人懐かしや赤蜻蛉(夏目漱石)
・象も蝶も一頭分の涼新た(なつはづき)
・ペリカンは秋晴れよりもうつくしい(富澤赤黄男)
・かりかりと蟷螂蜂の皃を食む(山口誓子)
8月29日〜31日
・鈴虫や月のうさぎの眠る頃(山田佳乃)
・秋の蚊と互いの運を嘆き合わん(越智友亮)
・風立つとこころ浅間へ草雲雀(大石香代子)
8月25日〜28日
・太刀魚は右向け右とならびおる(行川行人)
・嘘も厭さよならも厭ひぐらしも(坊城俊樹)
・白馬を少女瀆れて下りにけむ(西東三鬼)
・すいつちよん暢気がちやがちや早合点(奥坂まや)
8月21日〜24日
・石たたきそこは西郷どんの肩(近藤 實)
・邯鄲や紙を千年漉く国に(樫本由貴)
・曲り家に可愛がられて馬肥ゆる(大橋越央子)
・たましひのたとへば秋のほたるかな(飯田蛇笏)
8月17日〜20日
・電柱に手を触れてゆくいなご捕り (桂 信子)
・うつくしや鰯の肌の濃さ淡さ(小島政二郎)
・しづかなる力満ちゆき螇蚸飛ぶ(加藤楸邨)
・稲びかり猫の喧嘩に割つて入る(仲 寒蟬)