8月13日〜16日
・鶏たちにカンナは見えぬかもしれぬ(渡辺白泉)
・小さくて鉦叩には見えねども(西村麒麟)
・夏蚕の座ひろげ玉音聴きたる日(竹内弥太郎)
・お尻から腐つて来たる瓜の馬(茨木和生)
8月9日〜12日
・戦争にたかる無数の蠅しづか(三橋敏雄)
・長生きの象を洗ひぬ天の川(桑原三郎)
・山の日のゾウリムシつてきらつきら(小川楓子)
・鳴きそめしつくつくぼふしいづれ死ぬ(齋藤 玄)
8月5日〜8日
・握りつぶすならその蟬殻を下さい(大木あまり)
・原爆許すまじ蟹かつかつと瓦礫あゆむ(金子兜太)
・山繭の手荒きもののうすみどり
・秋立つとしきりに栗鼠のわたりけり
8月1日〜4日
・閑さや岩にしみ入蟬の声(松尾芭蕉)
・まくなぎに目鼻まかして牛の貌(清崎敏郎)
・飼猫の柄教へあふ夜の秋(津久井健之)
・犬の眼の狼光り木下闇(中嶋鬼谷)
7月29日〜13日
・柔かく女豹がふみて岩灼くる(富安風生)
・蝶の舌ゼンマイに似る暑さかな(芥川龍之介)
・野馬追の武者を尻目に放れ駒(行方克巳)
7月21日〜24日
・天牛の星空の髭長々と(斎藤夏風)
・道をしへ一筋道の迷ひなく(杉田久女)
・涼風の抜けみちはここ馬繫ぐ(茂木連葉子)
・夏深し釣られて空を飛ぶ魚 (澤 好摩)
7月25日〜28日
・まるまるとゆさゆさとゐて毛虫かな(ふけとしこ)
・手に軽く握りて鱚といふ魚 (波多野爽波)
・国引の力もて引け兜虫(大谷弘至)
・夏帽子駝鳥に求愛ポーズされ(松野苑子)
7月17日〜20日
・蚊にもよく喰はれ健康優良児(杉原祐之)
・梅雨明や牛にお早う樹にお早う(布施伊夜子)
・穀象やわれに貧しき戦後あり(岡部六弥太)
・日盛や動物園は死を見せず(髙柳克弘)
7月13日〜16日
・羚羊の水場と知らず岩魚釣(村上喜代子)
・羽蟻潰すかたち失ひても潰す(澤田和弥)
・魚はみな素顔で泳ぐチェホフ忌(武藤紀子)
・朝焼の波飛魚をはなちけり(山口草堂)
7月9日〜12日
・みみずももいろ土の愉しき朝ぐもり(柴田白葉女)
・森涼し裸婦とライオンは眠り(前川弘明)
・枝になりきりし尺蠖糞こぼす(加藤瑠璃子)
・ただならぬ海月ぽ光追い抜くぽ(田島健一)
7月5日〜8日
・泥鰌浮いて鯰も居るというて沈む(永田耕衣)
・山蛭の言い分も聞こうではないか(宇多喜代子)
・子を追つて蟻の国まで来てしまふ(明隅礼子)
・鵺鳴くや退きどき死に際ぬかりあるな(平井さち子)
7月1日〜4日
・潮の香へ開く改札夏つばめ(奥名春江)
・金粉をこぼして火蛾やすさまじき(松本たかし)
・山晴るる日は呼び合ひて四十雀(中島畦雨)
・舟虫の逃げに徹せし一生かな(三村純也)
6月29日〜30日
・子を肩に載せて歩けば青葉木菟(福永耕二)
・小さな鳥になつて茅の輪をくぐりけり(井越芳子)
6月25日〜28日
・梅雨の犬で氏も素性もなかりけり(安住 敦)
・音楽漂う岸侵しゆく蛇の飢(赤尾兜子)
・とうすみはこの傾きの家が好き(山口昭男)
・狂ほしき犬の挨拶アマリリス(津川絵理子)
6月21日〜24日
・廃校にゐつきてをりし蝮かな(茨木和生)
・武者返しまで達したるなめくぢら(杉原祐之)
・遠い遠い慈悲心鳥と思はるる(松澤 昭)
・ベラの海大きな他人と並ぶかな(宇多喜代子)
6月17日〜20日
・あめんぼの耳うちしては弾けけり(山本良明)
・白鷺の風を抱へて降りにけり(西山 睦)
・かたつぶり角ふりわけよ須磨明石(松尾芭蕉)
・見えかくれ居て花こぼす目白かな(富安風生)
6月13日〜16日
・葭切や葭まつさをに道隠す(村上鞆彦)
・こんなにも大きな波へ亀の子は(高畑浩平)
・時鳥厠半ばに出かねたり(夏目漱石)
・露地裏を夜汽車と思ふ金魚かな(攝津幸彦)
6月9日〜12日
・青蛙おのれもペンキぬりたてか(芥川龍之介)
・ちやぐちやぐ馬こ飾らぬ馬のかがやけり(戸塚時不知)
・郭公の声のあけくれ吾子育つ(木村蕪城)
・落し文ひらきて罪をひとつ負ふ(大橋敦子)
6月日5日〜8日
・今度こそ筒鳥を聞きとめし貌(飯島晴子)
・雨の階段あたらしくぶんぶんが死ぬ(今泉礼奈)
・比ぶるなかれ一八と犬の舌(島田牙城)
・するすると岩をするすると地を蜥蜴(山口誓子)
6月1日〜4日
翅わつててんたう虫の飛びいづる(高野素十)
トタン屋根の上で崩れるまで孔雀(田中亜美)
蜘蛛に生れ網をかけねばならぬかな(高浜虚子)
うまれた家はあとかたもないほうたる(種田山頭火)