3月13日〜16日
・貝寄風や若く死にたる弟に(榎本好宏)
・青空に喝采のごと辛夷咲く(白濱一羊)
・また職をさがさねばならず鳥ぐもり(安住 敦)
・春塵や一時空を見失ひ(齋藤美保女)
3月9日〜12日
・引鶴の天に抱き上げられしかな(対馬康子)
・雨空に朴の芽ぶきのさかんなる(長谷川素逝)
・車にも仰臥という死春の月(高野ムツオ)
・深空より修二会の竹と選ばれし(野中亮介)
3月5日〜8日
・片栗や自づとひらく空の青(加藤知世子)
・けいちつの空より白い羽とどく(原コウ子)
・北窓をひらけば暮るる山の空(今井杏太郎)
・風光る窓辺に起てば吾も鳥(木内憲子)
3月1日〜4日
・いきいきと三月生る雲の奥(飯田龍太)
・ふたたびとなきあおぞらを鳥帰る(日下野由季)
・天仰ぎつづけて雛流れゆく(大橋敦子)
・薔薇色の暈して日あり浮氷(鈴木花蓑)
2月25日〜28日
・あたたかなたぶららさなり雨のふる(小津夜景)
・揚雲雀空のまん中ここよここよ(正木ゆう子)
・空ばかり春めく底の信濃かな(仲 寒蟬)
・カーテンのつつむ雨音二月尽(津川絵理子)
2月21日〜24日
・母思ふ二月の空に頰杖し(長谷川かな女)
・刺客我が身の内に棲む余寒かな(西村和子)
・遍照の夕日春田もその中に(廣瀬直人)
・木の芽空魚に戻りたくなりし(福神規子)
2月17日〜20日
・この道しかない春の雪ふる(種田山頭火)
・浅春や木ごとの風が聞こえ来る(依光陽子)
・あの空へ溺れにゆこう紙風船(高岡 修)
・手を容れて冷たくしたり春の空(永田耕衣)
2月13日〜16日
・下萌ゆる力となりて降る雨よ(稲畑汀子)
・ヴァレンタインの日ゆき雲ゆき羊ゆき(窪田 薫)
・木登りがふとしたくなり春の雲(山田弘子)
・あをぞらを花粉とぶ日よ投函す(大塚 凱)
2月9日〜12日
・山茱萸のそらいちめんに嵐かな(古舘曹人)
・春愁の窓越しの星消えさうに(相沢文子)
・草の根に日のゆきわたる建国日(三田きえ子)
・春雷は空にあそびて地に降りず(福田甲子雄)
2月5日〜8日
・初午の祠ともりぬ雨の中(芥川龍之介)
・早春の空より青き貨物船(岡本亜蘇)
・父病めば空に薄氷あるごとし(大木あまり)
・春の星またたきあひて近よらず(成瀬桜桃子)