俳誌「小熊座」

月刊誌。昭和60年5月、佐藤鬼房が塩竈で創刊。師系・金子兜太・佐藤鬼房。人間風土の尊厳を思い、詩性の昂揚をめざす。

〈主宰〉高野ムツオ

■10月号の誌面から

死すとも可春の銀河を誤嚥して(高野ムツオ)

天空へ及ぶことなし蟻の列(渡辺誠一郎)

百日紅サイレンの尾の続きをり(我妻民雄)

汐風の青草を食む岬馬(八島岳洋)

沈黙は同意にあらず蟇(丸山千代子)

桃ひとつ踏んでも続く人生よ(岡本行人)

墓場より乗り込んでくる蝿一匹(檜野美果子)
 

俳句時評は樫本由貴「価値観のかさぶたをはがして」。第6回芝不器男俳句新人賞の最終選考会にて特別選考委員の関悦史が応募者の髙鸞石に対して「人格障害だ」という不適切発言をおこなった件や岡田一実「『杉田久女句集』を読む ガイノクリティックスの視点から」(現代俳句評論賞受賞作)について触れ、合わせて、フェミニズムをめぐって応答が続いている青本瑞季に回答する。

千倉由穂「星座渉猟」は俳壇の近作の鑑賞。〈血縁のあはさ早桃のかたさかな 成田一子〉について「どちらもひとつの個同士である。個としてあることを自覚することの健やかさを感じて、気持ちがよい一句」と鑑賞する。